不買運動や反対デモだけが消費者運動ではない。企業に利益をもたらしつつ企業に社会的に責任のある選択をさせようとする新しいカタチの消費者運動が出現した。その名も”キャロットモブ(Carrotmob)“。”carrot”(ニンジン)と”mob”(群衆)という言葉を組み合わせたネーミングに、群がる顧客をニンジンに企業の進む方向を自分たちの手でコントロールしようという想いが見てとれる。なお、活動の焦点は環境問題に置いている。
2008年3月にサンフランシスコで行われた具体的なキャンペーンの内容はこうだ。
1.町の酒屋数十店舗に事前に質問する。「ある一日の売上の何割を、店のエネルギー効率を良くすることに使えるか?」。
2.その対価として、その日には大勢の顧客を連れていくことを約束する。
3.回答があった店舗のうち、最も高い割合を提示した店舗に、呼び集めた大勢の消費者で押しかけ、ひたすら物を買う。
実際に選ばれたのは”K&D Market”という名前のお店で、その日の売り上げの22%をエネルギー効率向上に充てることを約束した。
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「不買日」ならぬ「購入日」の2008年3月29日(土)に”K&D Market”に訪れたのは300人以上もの消費者たち。平日の一日の売り上げが$1,800 – 2,000、週末で$3,000程度で、事前に”K&D Market”の担当者が予想したキャンペーンでの売り上げは$5,000だったが、蓋を開けてみれば予想の倍近い$9,276.50もの売り上げがあった。そして、その22%、$2,000を投じて、照明をエネルギー効率のよいものに取り換えた。
Carrotmob Makes It Rain from carrotmob on Vimeo.
この動きは、サンフランシスコからカンザス・シティ、ニューヨークへと広がり、海を渡って英国、ヘルシンキ(フィンランド)へも伝わっている。いずれも舞台は街の小売店、飲食店で、環境問題に対処するという意味ではインパクトは微々たるものだが、こうした実績を積み上げ、活動を大きくしていく計画のようだ。大企業、多国籍企業の巨大な経済活動にどこまで迫っていけるか、期待を込めて見守りたい。
とはいえ、”キャロットモブ”自体がそこまで大きくなるとすると、”キャロットモブ”が巨大な権力を持つようになる訳で、彼らが恣意的・独善的な活動に陥らないかどうかもあわせて見ていく必要もあるのかもしれない。